ペンレコーダー記録とパソコン記録の差異に関する検討資料
本書は、従来方式のペンレコーダーによるチャート用紙記録方式と、パソコンによる電子記録方式との両者に差異が無いことをご説明する資料です。はじめに、電圧に対する制度の差異についてご説明し、次に時間軸に対する精度の差異についてご説明します。
電圧に対する差異
ペンレコーダーの本来機能(時系列で記録された電圧の絶対値を記録し読み取る)
ペンレコーダーに入力される信号は電圧です。ペンは電圧に応じて、記録紙上を0目盛から100目盛の範囲で移動します。例えば、1Vレンジの場合は、0Vを記録紙の0目盛の位置に調整することで、1Vの入力があった場合は100目盛に移動します。0.5Vの場合は50目盛に移動します。(図1)入力信号がプラスにもマイナスにも変化する信号の場合、図1のように0V=0目盛とするとマイナス信号を記録することが出来ません。そこで、マイナスを含む信号の場合は、0Vの位置をオフセットします。図2は、0V位置を50目盛の位置に移動したときの入力電圧とペンの目盛位置の関係を表しております。この場合、入力レンジは1Vですが、0Vの位置を50目盛に移動したことで記録できる電圧は、-0.5Vから0.5Vとなります。つまり、この範囲を外れた信号は記録できません。
ペンレコーダーに入力された電圧とペンの目盛位置の関係は式1で表すことが出来ます。
通常は、ペンの位置から入力電圧を調べることから、実務では式2を使います。
例えば、2Vレンジで、0V時の目盛位置が50目盛に調整したペンレコーダーが75目盛の位置で記録した場合は、(75-50)÷100×2=0.5となり、0.5Vの電圧が入力されていることになります。
このようにペンレコーダーの本来の機能は電圧の絶対値を読み取ることにありますが、2コイル型磁気探査信号の場合は、対照的な電圧の変化(振幅)を読み取る必要があります。
ペンレコーダーで記録された信号から電圧の変化を読み取る
図3は、1Vレンジで記録された波形です。0Vの目盛位置は不明ですが、設定レンジが判れば目盛を読み取り、式3を使うことで振幅(V)が分かります。(70-30)÷100×1V =0.4Vの振幅
つまり、設定レンジ(V)÷100(目盛)を計算することで、1目盛あたりの電圧(V)が分かります。磁気探査の場合、記録紙の0目盛と100目盛の幅が250mmであることから、振幅の読み取りに定規を使うことが可能となります。目盛と定規のmmの関係は、式4となります。
磁気探査においては、式4を使い振幅電圧を計算せずに、設定レンジと振幅の長さから異常点を計算するよう計算式が組まれていますが、振幅は入力電圧の対照的な変化量となります。表1は、レンジとペンの振幅(目盛の変化量)から、定規による長さと、入力電圧の関係をまとめています。ここで注意すべき点は、記録紙上では全く同じ振幅でも実際の入力電圧(コイルが反応した磁気量)は、ペンレコーダーの設定レンジによって大きく異なる点にあります。レンジを間違えると磁気量の計算が大きく変わることから、ペンレコーダー方式での記録の場合は、複数のレンジを複数のペンで同時に記録するようにしております。PCの場合は直接電圧を取り込み、記録するので複数ペンでの記録は不要となります。
磁気探査におけるペンレコーダー方式の特徴
記録紙の読み取り分析作業におけるヒューマンエラーを防止することを目的として、実務では複数のレンジで同時に記録し、定規で長さ(mm)を測り、入力電圧への変換など煩わしい単位変換作業は、データ整理時の磁気量計算式の中で行うように設計されています。一方で上記しましたとおり、センサーから出力される信号は「電圧」であり「長さ」ではありません。パソコンでの記録方式は、センサーから出力される「電圧」を観測し振幅を読み取る仕組みとなります。次にパソコン記録方式についてご説明いたします。
パソコンにおける記録方式
センサーから出力された信号は、A/D変換回路で量子化(数値化)されます。この数値を一定の周期で読み取り、読み取ったデータ(入力電圧値)は時系列で保存されます。弊社のA/D変換の精度は12bitで行われます。この精度を式5で表します。
式5の4096と5Vは、A/D変換回路の性能で決まる固定値です。例えば、入力電圧が5Vの場合は、「量子化された値」は、4096として記録されます。また、逆に「量子化された値」が1変化した場合の入力電圧の変化量は、0.0012207Vとなります。仮に業務で使うペンレコーダーの最小レンジ1Vで記録した場合の長さに置き換えますと、振幅電圧(V)=0.0012207V、設定レンジ=1Vを式4に代入し、0.0012207×250÷1=0.305175mmとなり、定規では読み取り困難な精度でデータを記録することになります。
時間軸に対する差異
ペンレコーダー方式の場合
記録紙の送り速度は、毎分300mm(毎秒5mm)と決まっています。磁気探査時の歩行速度は、毎秒1mですので、記録紙の1mmを移動距離に換算すると0.2mになります。定規の目盛を目測で分割し0.5mm単位で測れた場合、記録紙の読み取り精度の限界値は、移動距離に換算して0.1m単位となります。
パソコン方式の場合
パソコンのサンプリングは、1ms毎に行われますので、1秒間に1,000個のデータを取得することになります。つまり、歩行速度が1m/secの場合、1サンプルあたりの距離に換算しますと0.001mとなります。